新緑のまぶしい季節となりました。
この季節に向けて準備を進めてきた、木工作家・斗沢誠さんと、ガラス作家・三浦侑子さんの二人展。神泉の実店舗でお客様とのおしゃべりを楽しみながら、おふたりの作品をご紹介することを楽しみにしておりましたが、現在の状況下ではかなわず、オンラインショップ限定での開催とさせていただくことになりました。
会期:2020年5月14日(木)〜6月2日(火)
※14日(木)11時より展示・販売をスタートします。
作品を直接見ていただけないのがもどかしい限りですが、少しでもリアルにお伝えできるよう、スタッフが感じた作品の魅力をブログやInstagramでお伝えしていきたいと思います。今日は斗沢誠さんの作品をご紹介しましょう。
まずご紹介したいのが、ナラの古材を活かした角盆です。
古材特有の亀裂や虫食いの穴。使いづらさがないといえば嘘になります。斗沢さんご自身も、それをよしとするまではずいぶんと時間を費やしたのだそう。しかし、「自然そのものを生かすことによって生まれる存在感は、人工的には再現できない」と気づいた日から、好んで古材を使い、木という天然の資源を可能な限り有効に使い切りたいと考えるようになったといいます。

割れは丈夫な山葡萄のつるを使って補修。黒色は鉄媒染によるものです。亜麻仁油を主成分としたオイルを浸透させて下地を作り、さらにウェットサンディングという手のかかる方法で仕上げています。そのため、長く使ってもほとんどお手入れいらずですが、表面が白っぽくなったり、ざらつきを感じたときには、必要に応じて軽くやすりをかけオイルを再塗布するとよいとのこと。オイルは乾性油と呼ばれる木材の手入れ用のものがベストですが、手に入らなければ食用のオリーブオイルを代用しても大丈夫だそうです。
こちらはナラの色をそのまま活かし、最後にウレタンで加工した一点。刷毛塗りによるていねいな仕上げで、見た目も肌合いもオイルフィニッシュと変わりません。なお、すべての古材は衛生面を考えて80℃の高温で1週間、人工的に乾燥させているそうです。
斗沢さんが暮らす北海道の広尾町は、今も杣夫(そまふ)と呼ばれる人々が山林を守っています。10月の新月に木を切り倒し、そのまましばらく寝かせ、雪がまだあるうちに運び、夏場に加工をするのだそうです。寒い時期の伐採はたいへんですが、そのかわり菌が繁殖しにくく、割れや変形が少ない良質な木材ができるといいます。しかし、それだけ手間をかけた木材は非常に高価です。ふだんの生活に使う木製品をできるだけ価格を抑えて作りたいと考えた結果、斗沢さんは風で倒された天然木(風倒木)を用いることを思いついたといいます。沼地のような柔らかな地面に倒れた木であれば傷みも少なく、食器や盆に蘇らせることは十分に可能、と考えることができたのは、木を知り尽くした斗沢さんならではといえるでしょう。
そこから生み出された器は、「一刀彫」というとても手のかかる手法で作られています。
ニレの風倒木をていねいに一刀彫で仕上げたボウルは、天然木ならではの美しい木目。ウレタンによる完全防水がほどこされています。
センの木の作品はナチュラルな色を活かして。ずっしりとした重さが心地よいボウルです。
よちよちと歩き出しそうな四つ足に思わずほっこり。タモ材の作品です。
クルミに鉄媒染を施したボウルはシャープな雰囲気。
ウレタン加工もいろいろで、斗沢さんの木製品の仕上げはとてもていねい。肌合いだけではウレタンがかかっていることはまったくといっていいほど分かりませんが、水をかけてもこの通り、ちゃんとはじいてくれます。お盆の場合、これがどれだけ助かることか!ぬれたふきんやグラスをちょっと置いても、染みになる心配もありません。とはいえ、素材は木ですので、長時間濡らしっぱなしにするのは厳禁です。
会期:2020年5月14日(木)〜6月2日(火)